KAST Cardは、等級を年会費で買うカードである。 Standardは無料、Premiumは年1,000USD、Privateは年10,000USD。本サイトが扱う13枚の中でこの構造は唯一で、他のカードの等級は保有量やポイントで決まる。
そして日本から申し込めるかどうかは、公式資料からは確認できない。 理由は後述するが、それ自体がこのカードの特徴でもある。
日本から申し込めるのか:公式の一覧が存在しない
KASTは対応国の一覧を公開していない。公式の説明は「KYCの際にドロップダウンから国を選ぶ。載っていなければまだ対応していない」というものである。
つまり申し込み手続きを始めてみないとわからない設計になっている。除外リストすら公開されていないので、「除外されていないから大丈夫」という推論もできない。
本サイトは日本についての公式の記載を確認できなかった。したがって、このカードの日本での可否は未確認として扱う。「日本で使える」と書いている記事を見かけたら、その根拠を確認したほうがよい。
なお本サイトは台湾については、KYCの国別ドロップダウンに台湾が含まれていることを確認している。日本についても同じ方法で確認できる可能性はあるが、本サイトはまだ実施していない。
年会費で等級を買う構造
| 等級 | 年会費 | キャッシュバック | 対象上限 |
|---|---|---|---|
| Standard | 無料 | 1.5% | 月2,000USDまで |
| Premium | 1,000USD/年 | 2% | 月10,000USDまで |
| Private | 10,000USD/年 | 3% | 月40,000USDまで |
上位等級が年会費に見合うかどうかは、計算すればはっきりする。
Premium(年1,000USD)の損益分岐点
StandardからPremiumに上げると、キャッシュバックは1.5%から2%になる。差は0.5%。年会費1,000USDを取り戻すには、
1,000USD ÷ 0.5% = 200,000USD
年間20万USD、月あたり約16,700USDの決済が必要になる。日本円でおよそ月250万円である。
ただしStandardの対象上限は月2,000USDなので、それを超える分にはそもそもキャッシュバックがつかない。上限まで含めて考えると差はさらに小さくなり、実際の分岐点はもっと高くなる。
Private(年10,000USD)
同じ計算をすると、Standardとの差1.5%に対して年会費10,000USD。単純計算で年間約67万USDの決済が必要になる。個人の消費でこの水準に届くことはまずない。
Private等級は、キャッシュバックの利回りで元を取るものではなく、それ以外の付帯サービスに価値を見る人向けだと考えたほうがよい。
手数料の内訳
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| バーチャルカード発行 | 2枚目まで無料、以降1枚2USD(一部の国は1枚目から2USD) |
| 物理カード | カード自体は無料、送料40USD |
| 年会費 | Standard無料/Premium 1,000USD/Private 10,000USD |
| 米ドル決済 | 無料 |
| 外貨取引手数料 | 0.5%〜1.75%(居住地と決済地による) |
| 入金 | ステーブルコイン0%/非ステーブルコインの自動換算2〜5%/ACH 2USD/FedWire・SWIFT 15USD/SEPA 0.5% |
| 暗号資産の換算 | ステーブルコイン→USDは1:1、スプレッド0% |
| ATM出金 | 3USD + 出金額の2%(米ドル以外はさらに0.5〜1.75%) |
発行コストは安い
物理カードが「カード無料+送料40USD」というのは、本サイトが扱う中でも安いほうである。RedotPayは100USD、ether.fiは50USD(Core)、Bitget Walletは49USD。物理カードが必要で発行コストを抑えたいなら、KASTは有力な選択肢になる。
ATM出金は高い
3USD+2%という組み合わせは、少額で使うと効いてくる。たとえば100USD引き出すと、
3USD + 100USD × 2% = 5USD(実質5%)
外貨の場合はさらに0.5〜1.75%が乗る。ATMを日常的に使う用途には向かない。
入金はステーブルコインで
非ステーブルコインを入れると自動換算で2〜5%が引かれる。BTCやETHを直接入れるのではなく、先にステーブルコインに換えてから入金するほうが安い。 この差は最大5%あり、キャッシュバックの1.5%を軽く上回る。
外貨取引手数料が「範囲」である問題
0.5%〜1.75%という記載は、公式に「居住地と決済地によって異なる」と書かれている。つまり日本の居住者が実際にいくら取られるかは、公式の記載からは確定しない。
本サイトはこのカードを日本で実測していないため、この点は空欄のままにしている。1.75%だとすると、外貨手数料だけでStandardのキャッシュバック1.5%を上回ることになる。ここを確定させずに「実質還元1.5%」と書くことはできない。
税金の扱い
日本円に換金していなくても、カードで買い物をした時点で所得が生じうる。 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和7年12月26日)問1−2にこう書かれている。
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
キャッシュバックを暗号資産で受け取る場合も、受け取った時点の時価が基準になる。詳しくは仮想通貨デビットカードの税金。
よくある質問
KAST Cardは日本で申し込めますか?
公式が対応国の一覧を公開していないため、本サイトは確認できていない。KYCの国別ドロップダウンに日本があるかどうかで判断することになる。
Premium等級にする価値はありますか?
キャッシュバックだけで年会費1,000USDを回収するには、月250万円規模の決済が必要になる。しかもStandardの対象上限(月2,000USD)を考慮するとさらに条件は厳しい。還元目的でのアップグレードは、ほとんどの人にとって割に合わない。
他のカードと比べてどうですか?
発行コストは安く、キャッシュバックの数字も公開されている。一方で日本での可否が未確認、外貨手数料が範囲でしか示されていない、ATM出金が高い。全カードの手数料比較とKAST Cardのページに各項目の出典を載せている。
手数料は本サイトが2026年8月5日にKASTの公式費用ページと照合したもの。数字が変わっていた場合はお問い合わせから教えてほしい。
日本での課税の取扱い
このカードで支払うということは、保有する暗号資産を手放すということである。国税庁は、暗号資産で商品を購入した時点で「譲渡」があったものとして扱うと明記している。つまり日本円に換金していなくても、カードで買い物をした時点で所得が生じうる。
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」令和7年12月26日 問1−2「暗号資産で商品を購入した場合」
所得区分
暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分される。ただしその年の暗号資産取引に係る収入金額が 300 万円を超える場合は、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ雑所得(業務に係る雑所得)となる。
問2−2「暗号資産取引の所得区分」〔令和7年12月更新〕
カードで使う場合の注意点
- 取引ごとに記録が要るカード決済は回数が多い。1回ごとに「そのときのレート」と「取得価額」が必要になるため、後からまとめて計算するのは難しい。明細を月次で保存しておくほうがよい。
- ステーブルコインでも同じ扱い価格がほぼ動かない USDT・USDC であっても、暗号資産を手放したことに変わりはない。取得時と決済時のレート差がゼロに近いだけで、取引としては発生している。
- キャッシュバックも受け取った時点の価額で見る暗号資産で受け取るキャッシュバックは、受け取った時点の時価が基準になる。受け取った後に値上がりして売れば、その分は別途の損益になる。
- 海外発行のカードでも日本の課税は変わらない発行会社が日本の登録業者かどうかと、日本の居住者に課税されるかどうかは別の話である。「海外のカードだから申告しなくてよい」という説明は誤り。
- 年間取引報告書は出ないことが多い国内の暗号資産交換業者が発行する年間取引報告書は、海外のカード発行会社からは基本的に出てこない。自分で記録を残す前提で使うことになる。
本サイトは情報提供のみを行っており、税務上の助言ではない。上記は国税庁が公表している取扱いを引用したものであり、個別の判断については税理士または所轄の税務署に確認してほしい。なお「このカードを使えば申告義務がなくなる」という説明はすべて誤りである。
出典:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」(PDF) 令和7年12月26日発行 本サイト確認日 2026-08-17