日本円に換金していなくても、仮想通貨デビットカードで買い物をした時点で所得が生じうる。 国税庁は、暗号資産で商品を購入した場合はその暗号資産を「譲渡」したものとして扱うと明記している。

この記事は、その根拠を公式資料から引き、カードで使うときに実際に困る点を並べたものである。節税の方法は書かない。 そもそも、カードを使うことで申告義務が消える仕組みは存在しない。

国税庁は何と書いているか

出典は国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」令和7年12月26日、問1−2「暗号資産で商品を購入した場合」。原文はこうである。

保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を譲渡したことになりますので、この譲渡に係る所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。

関係法令等として所得税法36条・37条・48条の2、所得税法施行令119条の2・119条の5が挙げられている。

言い換えると、「売っていないから課税されない」は成り立たない。 カード決済は、暗号資産を手放して商品を受け取る取引であり、売却と同じ扱いになる。

国税庁が示している計算例

同じ資料に、次の例がそのまま載っている。

  • 4月2日 4,000,000円で4BTCを購入
  • 10月5日 403,000円(消費税等込)の商品の決済に0.3BTCを支払い(1BTC=1,350,000円)

このときの所得金額は、

403,000円 −(4,000,000円 ÷ 4BTC)× 0.3BTC = 103,000円

商品価額(=譲渡価額)から譲渡原価を引いた額が所得金額になる。1BTCあたりの価額は総平均法または移動平均法のうち選択した方法で計算する(選択しない場合、個人は総平均法)。この例では暗号資産の売買手数料は考慮されていない。

注目すべきは、403,000円の買い物で103,000円の所得が立っているという点である。買い物の金額ではなく、値上がり分が課税対象になる。逆に取得価額のほうが高ければ損失になる。

所得区分はどうなるか

問2−2「暗号資産取引の所得区分」〔令和7年12月更新〕には次のように書かれている。

暗号資産取引により生じた利益は、原則として**雑所得(その他雑所得)**に区分される。ただしその年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、

  • 帳簿書類の保存がある場合……原則として事業所得
  • 帳簿書類の保存がない場合……原則として雑所得(業務に係る雑所得)

となる。帳簿書類の保存があっても営利性が認められない場合などは、事業所得に該当するかどうかを個別に判断することとされている。

カードで使う場合に実際に困る点

ここからは国税庁の原文ではなく、カード利用者として実際に問題になる点である。

取引回数が多い

カード決済は月に何十回にもなる。1回ごとに「そのときの交換レート」と「譲渡原価」が必要になるため、年末にまとめて計算するのは現実的でない。明細は月次で保存しておくほうがよい。

ステーブルコインでも扱いは同じ

USDTやUSDCのように価格がほぼ動かない銘柄でも、暗号資産を手放したことに変わりはない。取得時と決済時の差がゼロに近いだけで、取引としては発生している。「ステーブルコインだから対象外」という説明は誤りである。

キャッシュバックは受け取った時点の価額で見る

暗号資産で受け取るキャッシュバックは、受け取った時点の時価が基準になる。その後に値上がりしてから売れば、その分はさらに別の損益になる。

海外発行のカードでも日本の課税は変わらない

発行会社が日本の登録業者かどうかと、日本の居住者に課税されるかどうかは別の話である。「海外のカードだから申告しなくてよい」は成り立たない。

年間取引報告書は基本的に出ない

国内の暗号資産交換業者が発行する年間取引報告書は、海外のカード発行会社からは出てこないことが多い。自分で記録を残す前提で使うことになる。

よくある質問

カードを使えば税金を減らせますか?

減らせない。カードでの決済は暗号資産の譲渡にあたり、売却して日本円にする場合と課税上の扱いは同じである。「カードを使えば申告不要」「換金していないから対象外」と説明しているサイトがあるが、いずれも国税庁の資料と矛盾している。

損した場合はどうなりますか?

取得価額のほうが高ければ損失になる。ただし雑所得内での通算はできても、給与所得などとの損益通算はできない(問2−11「暗号資産取引で損失が生じた場合の取扱い」)。

いくらから申告が必要ですか?

金額の線引きは個人の状況(給与所得の有無、他の所得の額など)によって変わるため、この記事では断定しない。所轄の税務署または税理士に確認してほしい。

この記事の立場

本サイトは情報提供のみを行っており、税務上の助言ではない。上記は国税庁が公表している取扱いを引用したものであり、個別の判断については税理士または所轄の税務署に確認してほしい。

数字や条文が変わった場合は、この記事も更新する。出典は次のとおり。

本サイト確認日:2026年8月17日